名古屋市東区鍋屋町通りの老舗コーヒー焙煎屋さんの耐震改修およびリノベーション。
<ファサード>
ファサードを下から見上げたところ。外観の趣はそのままに、一部の塗装、サイン(左上)工事を施した。
カウンター越しの小窓(写真左側)からの販売とコミュニケーション誘発
新しく作られたロゴマーク(昔のミルマシーンのシルエット)
<1F>
レジ・販売カウンター(左端)と隣のショーケース。既存構造体、しっくい壁を残し、内側に新たな構造(柱、梁)を設置。壁仕上げに木毛セメント版を用いている。
旧ファサードで使用していた木製建具を利用した黒板。お店のメッセージが描かれる。
長年使い込まれた焙煎機。焙煎機の歴史や趣をそのまま伝える空間とした。
3代続くショーケース
<2F>
2F飲食スペース 古くからの土壁、竿縁天井などが残る。中央のワークショップテーブルは一斗缶が並べられていた棚板を利用したW2700の大テーブル
(転用した棚板)
2F 家庭用マシンの陳列棚。壁の向こうには事務所。
通りの景色を眺められる2F客席
<階段>
階段に掲げられた銅版オブジェ。先代がブラジルから持ち帰った物。
昔ながらの手すりを残した階段
2Fで使用するスツールはわざわ座さんのKM.90/taruki-stool B
KM. 90 / taruki-stool B
現場も担当してもらった大工さんによる制作です。
〜 佇まいを残しつつ新たな街の拠点として 〜
澤井コーヒー本店さんは名古屋市中心部にある商店街で長く続く老舗コーヒー焙煎屋さんです。この度3代目に代替わりをした事を機会に築60年超えの建物を耐震改修しつつ、売り場、客席のリニューアルを行いました。眼前の通りではお客さんやサラリーマン、またこの鍋屋町商店街で働く人々が忙しく往来し、焙煎した豆やカップコーヒーを買っていく景色がすでに根付いている趣のある場所でした。
長年、地元の人々に愛されたこのお店の佇まいを、具体的な素材感や物、空気感や記憶を極力残しつつ新しくスタートする事をコンセプトとしています。
“昔の記憶を残すファサード”
ファサードに関しては1階建具の新調、外壁塗装(白い部分)および小さなサイン工事のみの最小限としつつも、お客さんとの新たな接点として直接コーヒーを手渡せる窓口とシンボルである焙煎機を覗ける窓を設置。
小豆色のファサード外壁、金色の屋号看板、錆びた庇板金や2階の木製格子窓は記憶を残す重要なパーツとしてそのまま使用しています。
“土壁を残しつつ新たなフレームで耐震補強”
今回の工事の一番の目的でもある耐震補強に関しては、既存構造体の一回り内側に在来木造のフレームを付け足して補強する方法を用いました。そのため新しく設けられた構造体の間からは昔のままの土壁が経年劣化の色彩や傷、落書きと共にインテリアとして残され三代続く老舗店としての重厚感を作りだしています。
「カフェ」では無くあくまで「焙煎所」としての世界観を保つため用いられた仕上材としての木毛セメント板の素材感がインテリアのアクセントとなり、先々代がブラジルから調達した調度品との時間的調和も狙っています。
また、処分する予定だった古い木製建具を、店内黒板サインやレジカウンターの枠材に利用しています。
“通りに向かって開く2階客席”
和室を改修した2階客席は通りに面して幅3間のカウンターを造作(樹種:キハダ)、格子窓越しに、ときに通り歩く人と会話も交わしながらコーヒーを楽しむ事ができます。
また、焙煎室で棚板として長年使用された木材を用いてワークショップにも使える長さ2,700mmの木製テーブルを中央に配置。染み込んだコーヒー豆の風合いをそのままクリアー塗装で閉じ込めた風合いがこの空間のシンボルとなっています。
Data
件名:澤井コーヒー本店
工事種別:リノベーション(耐震改修、内装、一部サッシ改修)
工期:2023年10月26日〜2024年5月31日
施工:(有)カワイ建築
床面積:1F- 68.67㎡、2F-49.69㎡
築年数(店舗部分):昭和34年(1959) 築63年
〜 before 〜